より深く、楊名時 八段錦・太極拳を学んでいきましょう!
※「あなたが変わる楊名時太極拳」(山と渓谷社)から引用
◆楊名時太極拳二十四式における稽古のポイント
太極拳二十四式の一式~二十四式までのそれぞれの「稽古のポイント」と「楊名時師家の教え」がご覧頂けます。
◆楊名時八段錦における稽古のポイント
八段錦の第一段錦~第八段錦までのそれぞれの「稽古のポイント」と「効能」がご覧頂けます。
◆楊名時太極拳稽古要諦
太極拳の稽古をするにあたっての大切な考え方が稽古要諦です。その4文字の言葉には身につけたい大切な教えが凝縮されています。教室ではふたつの型を学ぶごとに、稽古要諦を2項目ずつ学びます。こうすることで稽古要諦の教えが効果的に理解出来るとされています。
◆太極拳の呼吸
ゆったりとした動きと「深く長い呼吸」が太極拳の特徴です。呼吸は人間の生命維持に必要なとても大切なものです。「太極拳は呼吸法だ」といわしめるほど、太極拳と呼吸は密接につながっています。
- 【太極拳が呼吸がもたらす健康効果】太極拳の「深く長い呼吸」は、神経作用に影響し、なかでも人間の体を維持するために私たちの意志に関係なく働いている自律神経に働きかけます。自律神経は、交感神経と副交感神経がバランスを取り合って体の機能を保っています。自律神経のバランスが乱れると、体や精神に様々な症状が表れてしまいます。太極拳の深く長い呼吸はストレスや緊張状態にある時、優位に働く交感神経よりもリラックスしている時に働く副交感神経を優位にするので、心を休息させ、落ち着かせる作用があります。また、副交感神経は体を修復する力があるので、副交感神経が低下すると内臓が働かなくなり、消化・吸収が十分に行われなくなったり、血管が収縮するため体に必要な物質(酸素・栄養など)が運ばれなくなったりすることで、体に必要なものが足りなくなって、体に不調が出てくるようになってしまうのです。
- 【太極拳の呼吸とは?】楊名時師家は、呼吸についてこう述べています。「吐く息(呼気)を重視して、吸う息(吸気)の倍ぐらい時間をかけていきます。しかし、最初から無理しないこと。呼吸は自然に楽な状態での呼吸が望ましく、理想的には呼吸していることさえ忘れることです」。太極拳の呼吸の基本は、息を吸う時にお腹を膨らませ、吐く時にお腹をへこませる腹式呼吸です。鼻から深くゆっくりと息を吸って、お腹を膨らませたら、鼻からゆっくり細く長く息を吐きます。吐く息は特に大切でお腹がへこむまで吐き切ること。息を吸うのに7~9秒、吐く時はその倍くらいの時間をかけます。
- 【動きに合わせて呼吸するコツ】基本は、体を伸ばす時は吸い、縮める時は吐きます。手を体に引き寄せる時は吸い、押し出す時は吐きます。手を上げる時は吸い、下げる時は吐きます。八段錦は呼吸が動きによく合っているため、基本どおりに呼吸しやすいのですが、二十四式は型が連続し、バランスを取りながら移動して動くため、基本どおりに呼吸するのは難しいものです。稽古を積むうちに、呼吸と動きは自然に合ってくるものなので、焦らず稽古を重ねていきましょう。
◆太極拳の足の形
足を運ぶ時は、腰を軸に背筋をまっすぐにして、上体がぐらつかないようにします。片方の足からもう一方の足に重心を移していく時は、「分清虚実」という言葉が表すように、虚と実の足を意識し膝をゆるめて柔らかくゆったりと。動きながら片足を前や後ろに踏み出す時は、両足を基本的には一直線上に並びません。一直線になると重心が安定せず、バランスをくずしやすいので気をつけましょう。基本の足形は、以下の5つになります。
- 【馬歩:マーブー】馬にまたがった形、両足を肩幅の倍くらいに大きく開き、ひざを曲げて腰を落とし重心は中央に置きます。
- 【仆歩:プーブー】片方の足を斜め前に出し、ひざを軽く曲げて重心をかけ、もう一方の足は斜め後ろに出して、腰を落とし姿勢を低くした形。
- 【弓歩:ゴンブー】前に踏み出した足のひざを軽く曲げて重心をかけ、後ろ足を伸ばして両足の裏を床につけた形。
- 【虚歩:シュイブー】後ろ足に重心をかけ、前に出した足のつま先、またはかかとを軽く床につけた形。
- 【独立歩:ドゥリーブー】片方のひざを曲げて上げ、もう一方のひざを軽く曲げて重心をかけた片足立ちの形。
◆太極拳の挨拶
太極拳を始めるにあたり、「你好(こんにちは)」と挨拶から始めます。
そして、稽古が終わる時には「謝謝(ありがとうございます)」「再見(さようなら、またお会いしましょう)」。心を込めた挨拶を心がけましょう。
- 【足を閉じて立つ】両足を揃えて背筋を伸ばして立ちます。肩とひじの力を抜き、両手は自然にたらします。
- 【胸の前で両拳を作る】胸の前で軽く拳を握ります。
- 【上体を前屈する】ゆっくりと上体を前に倒していきます。肩、肘、拳はゆるやかに。
- 【床に拳がつくまで前屈】拳が床につくまで上体を倒します。
- 【上体を起こす】拳を握ったまま、上体をゆっくり起こしていきます。
- 【もとの姿勢に戻る】上体が戻ったら、動きを止め、もとの姿勢に戻ります。
◆立禅
立禅とは、文字通り立って行う禅のことです。太極拳の稽古の始めと終わりに行います。
体を正し、呼吸を整えて、心の静けさを求めます。
- 【足を閉じて立つ】両足を揃えて背筋を伸ばして立ちます。
- 【自然立ちで深い呼吸をする】左足を肩幅に開き、両膝をゆるめ、自然立ちします。肩と肘の力を抜き、あごを引き、両手は自然に垂らします。気を丹田に沈めて、深く、長く、ゆったりと腹式呼吸をします。鼻から静かに息を吸いながらお腹を膨らませ、全身に気を回して、鼻からゆっくりお腹をへこませながら吐きます。3~5分行いましょう。
◆甩手(スワイショウ)
「甩」という字はポイと投げるという意味。甩手は手を左右に大きく振る運動で、太極拳を始める時の準備運動として、また終わった後の整理運動として立禅の後に行います。
- 【自然立ちをする】左足を肩幅に開き、両膝をゆるめ自然立ちします。肩と肘の力を抜き、両手は自然に垂らします。
- 【腕を左右に開く】両腕をゆっくり左右に開き、上げます。両膝をゆるめます。
- 【両手を左右へ回す】腰を中心に左に両手を回します。両手をポイと投げる意識で回します。
- 【腰を左へ回す】軸を意識して上体を左へ回します。
- 【左へ回しきったら両手を戻していく】左へ両手を回しきったら、両手を戻していきます。
- 【両手を正面に戻す】両手を左へ回したら、一度正面に戻り、次は右へ回していきます。
- 【両手を右へ回していく】同じ要領で次は両手を右へ回していきます。
- 【腰を右へ回す】軸を意識して上体を右へ回します。
- 【右へ回しきったら両手を戻していく】右へ両手を回しきったら、両手を戻していきます。
- 【両手を正面に戻す】これで左右に回したことになります。この同じ動作を繰り返し行います。
- 【自然立ちへ戻す】両手を回す動きをだんだんゆっくりと小さくしていき、静かに収めます。
- 【もとの姿勢に戻る】左足を寄せて、最初の姿勢に戻ります。
◆稽古で気をつけたいこと
①心もちは焦らず・比べず・競わず
②動きはゆったりとまろやかに
③深く長い腹式呼吸で
④気の流れを意識して
⑤心を無にして
⑥動きやすい服装で
⑦稽古の場所と時間は無理がないように
⑧続けることが何より大切